ポピーインタビューVol4:山川淳司氏(小規模特養老人ホーム大曽根施設長)
●今回は福祉・介護分野、特に認知症ケアで活躍される山川淳司様にお話をうかがいました。
※山川氏の活動:社会福祉法人清桜会の小規模特別養護老人ホーム大曽根及び小規模多機能居宅介護事業所おおそねケアセンター施 設長で、社会福祉士、認知症ケア専門士)
ポピー:以下ポ)小規模特別養護老人ホームと小規模多機能居宅介護事業所を管理運営されています。困難ケースほど喜んで取り組む管理者ということをスタッフの方からうかがいました。中でも認知症ケアでは、地域からも一目置かれています。
山川氏;以下山)小規模多機能型居宅介護事業所おおぞらケアセンターの運営・管理に携わっているときに、山形県の認知症介護実践研修で認知症を学び、その人らしさ、その方の尊厳を徹底して大事にすることで、BPSD(行動・心理症状)が本当に良くなるという実践を経験しました。自分のケアで対象者の状態が良くなるという成功体験を重ねることで、医療だけでは難しいこともケアで良くなることもあるのだと、その面白さにどっぷりはまりました(完全に魅了された)。現在も更なるレベルアップのために、学習と実践を積み重ねているところです。
ポ)精神科専門医の太田秀樹先生という方が「認知症・医療の限界、ケアの可能性」という本を書いていらっしゃいますが、まさにその「ケアの可能性」を自身の実践で体験された訳ですね。
山)そうです。うちの入居者さん達、ご本人が苦痛に感じるようなBPSDはほとんどみられません。その人らしさを大切にすることで、本人にとっても辛い症状が緩和されていくのです。認知症の症状に関しては、どうしても周囲の自分達の困りごとになってしまい、その人を自分たちが思う方へ変えようとしてしまいがちです。そうではなく、パーソンセンタードケア方式などで振り返り、その人そのままを受け入れると、こちらの気持ちも楽になります。当施設の職員研修でも、認知症ケアには力を入れています。認知症ケア専門士受験に向けての費用補助や、資格手当てを設けています。
ポ)教育支援は人材定着にもつながっていますか?
山)つながっていると思います。やりがいと自信になっていると思います。また、人材定着ということでは、職員の話を良く聞くことや、子育て支援にも配慮しています。子どもを連れてきてもよい環境を作っていて、土日・祝日、夏休み・冬休みなど職員の子ども達でとてもにぎやかです。
ポ)職員の子どもさんが来ることで、入居のお年よりも喜ばれるのでは?
山)そうです。まずはお互いの「笑顔」や「活き活きとした表情」、頭をなでたり、握手したりとふれあいが見られます。特に印象にあるのは、お年寄りが子どもを見つめる「目」です。そこから何とも言えない温かな空間が創られるような気がします。また、小学校2年生の児童から、「私、ここ(おおそねケアセンター)にいるのが一番好き!」「毎日来たい!」と言ってくれた時には、「うるっ」ときてしまいました。その子は進んでお手伝いをしてくれるとてもよい子です。高齢者も子どもも、そして職員も、誰もが「居心地の良い」と思う『居場所~拠り所』を今後も創っていけたらなあと思っています。
ポ)理事長の高橋邦之先生との連携で、医療的リスクの高い方への対応にも力をいれておられますね。
山)高橋理事長がいることで、医療的なところが担保されています。余命1ヶ月の方、一人暮らしでがん末期の方など、どんな困難な状況でも、「地域を守る」という信念を共有しているからこそ、引き受けています。どこでもやれないことを、ここで引き受ける。そんな事例を積み重ねることで、力をつけてきた、そんな感じです。
ポ)小規模特養や小規模多機能での看取りも地域からは期待されていますね。
山)看取りも数多く対応してきています。多くは行き場のない方です。一人暮らしで余命わずか、頑固で入所は絶対嫌という男性がいました。小規模多機能の通いや訪問介護で信頼関係が築かれ、最後には自分から「入所してもいい」と言われた方がおられました。
ポ)「あなた達なら、看てもらってもいい」というところまで、信頼関係ができたという感じですね。
山)そうだと思います。
ポ)今後やっていきたいことはありますか。
山)支援事例を積み重ね、研究というところまでもっていきたい。たまたま、上手くいったということではなく、誰もができるように検証していきたいですね。実践的研究です。
ポ)ケアの標準化ですね。職員の方は、日頃感じていることはありますか?
(主任石原氏):1分おきにコールをする方がいましたが、その人が今求めていることには、徹底して対応するという方針で、何度でもすぐに訪室するようにしたところ、ある時期からピタッと穏やかになられました。そんな成功体験を施設長にほめてもらうことで、また頑張れる感じです。通院前には必ずカンファレンスをして現状を確認し、状況が通院先に伝わるように医療との連携にも、努めています。
ポ)管理者として、実践者として超多忙な毎日をお過ごしと思いますが、気分転換や趣味は何ですか?
山)車が大好きで、愛車はスイフトスポーツ。2ヶ月に1回くらいですが、菅生のサーキットで、時速百数十キロで走りこんでいます。0.1秒を縮める自分との戦いをしています(笑)
インタビューを終えて
成功体験から来る仕事の面白さにあふれたお話でした。とかく、大変と思われがちな(認知症)介護が、実は面白い!多くの人にそのノウハウを伝えたい。そんな情熱をひしひしと感じました。
施設のサロンスペースで、入居者の女性に「めがねが壊れたの。見てくれる?」と話しかけられる様子からは、いつもなじみの人として自然にそこにいる方ということが伝わってきました。
次回は、山川施設長のお話しにも出てきた高橋邦之先生に、インタビューさせていただく予定です。
ポピー活動トピックス(4月)
地域包括支援センター事業計画意見交換会に参加
<4月24日包括ふれあい>住民対象の介護ふれあい交流会や医療関係者連絡会でポピーも協力させていただくことになりました。包括ふれあいとは、昨年も「在宅看取り」をテーマとした医療関係者連絡会に協働させていただいています。
<4月11日包括南沼原>脳いきいきカフェ、生涯現役バリバリ講座、ずっともっと南沼原などなど、ひきつけるネーミングや、「ない資源はその場で作り始めることを目指している」というセンター長の言葉が印象的でした。昨年に引き続き住民対象の健康講座(生涯現役バリバリ講座)などに協働させてもらいます(今回はがん看護専門看護師さんを講師として仲介)
4月16日:福島市在宅医療・介護連携支援センターからの視察対応
福島市では、10月から市医師会が受託して、在宅医療・介護連携拠点が発足するとのことで、看護師、社会福祉士のお二人が視察に見えられました。「相談への対応」「研修の企画」「入退院支援」など情報収集していかれました。
4月10日:緩和ケア研究会(事業計画のための役員会)
緩和ケアを必要とする医療重度者への対応事例など参考にできる機会になる研究会です。ポピーからも日程広報させていただきます。
4月12日:県看護協会研修会(診療報酬・介護報酬改定説明会)参加
平成30年度、診療報酬・介護報酬改定研修会では、平成30年3月に改訂された『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』が診療報酬・介護報酬ともに要所に関わっていると感じました。
4月5日:やまがた在宅ケアかんごねっと役員会(H30年度計画)
年5回の研修計画のなかに、今年もポピーとの共催「認知症サポーター養成講座」(9月)が計画されました。
在宅医療スタートブックが発刊されました(山形市医師会発行)
<山形市医師会ホームページお知らせ欄からダウンロードできます>
~在宅医療のはじめ方・すすめ方~ 団塊の世代が後期高齢者となり医療や介護に大きなニーズが見込まれる2025年に向けて、山形市では在宅医療等需要の増加が多く見込まれていることから、山形市内において在宅医療に取り組む医師数の増加を図ることを目的に在宅医療スタートブックを発行しましたので、ご覧ください(医師会ホームページのコメント~)
ポピー活動トピックス(2月、3月)
●3月19日山形市内居宅介護支援事業所連絡会(世話人代表高梨友也氏)にて山形市長寿支援課とともに情報提供
退院支援フロー(地域版)のポイントを介護報酬改定とからめながら、長寿支援課より解説。ポピーからは30年度はフローの重要部分(意思決定支援など)を体系的に研修で学べるよう検討中の旨報告。グループワークでは、退院支援に向けての前向きな情報交換が多くなっていると感じました。
●3月15日、16日山形市住民説明会傍聴
15日(高瀬コミュニティセンター)、16日(大郷コミュニティセンター):住民の皆さまへ、介護保険課、長寿支援課からわかりやすく、地域包括ケアの必要となる社会構造と多様な施策を説明。住民の皆さまからは、介護保険料の動きなどへ質問が続きました。ポピーからは、在宅医療の窓口周知の為にパンフ配付させていただきました。
●3月9日かんごねっと学習会(看護サマリー病院版、訪問看護版についてグループワーク)
かんごねっとは、現在会員数100人以上で、地域看護職よりも病院看護師数の会員数が増えています。年5回の学習会を開催、毎回50人以上の参加者があり、今回も標記をテーマに熱い情報交換が交わされました。筆者のグループでは、特に「病院からの情報で、入院中の経過はどこまで必要か、病状説明や受止め方は必要かどうか」「ADL欄は病院、地域双方とも具体的な詳細が知りたい。そのためにはチェックボックスだけでなく、備考欄の活用が良い」など多様な視点でディスカッションが交わさ、盛り上がりました。意外な方と知り合えるのもこの会の良さです。
●3月8日地域包括ふれあいにて臨時勉強会(救急受診と救急医療についてポピーより情報提供、グループワーク)
救急受診しても、帰宅後重度化するケースがあって対応に苦慮しているとの包括からの相談を受け、一次、二次、三次救急医療の考え方や現状、日頃の予防的対応、地域課題としての捉え方、他地域でのオーバーナイトシステムなど情報提供。超高齢社会の中増えるであろう高齢者の救急受診とその後の対応については、今後も検討必要な課題です。
●3月5日包括山形西部主催の居宅連絡会「医療と介護の連携に関する研修会・情報交換会」でポピーより退院支援フローにつき講話
関心は、情報提供書の様式に集まり、従来のものの活用がやりやすいとの意見が多いようです。必要なものが網羅されていれば、様式は問わないという現時点での考え方です。また、グループワークでは、訪問看護を退院直後から特別指示書で訪問可能との事について質問が続き「知らなかった」「よく知りたい」とのことで、訪問看護については、最近関心が高まっている感触を受けています。
●2月27日ポピー研修(訪問看護を重度化予防に活用しよう)
2月27日前回のブログにて紹介
●2月22日村山保健所在宅医療専門部会出席
県の7次医療計画、中でも在宅医療充実へ向けての県計画が情報提供されました。ポピーからは、県と市医師会が行っている在宅医療提供体制強化モデル事業は、地域の関心事でもあり、進捗を周知していただきたい旨コメントさせていただきました。
●2月21日ポピーねっとやまがた(医療・介護専用SNS)出張勉強会:在宅リハビリ看護ステーションつばさにて
ポピーでは、活用に向けて検討したい事業所まで出向き、勉強会や設定支援まで行っています。じわじわと活用が広がっており、利用者家族の参画もはかれたグループもあります。
●2月16日置賜地域医療・介護合同会議傍聴
置賜保健所が運営する標記会議では、入退院支援ルールの中の情報提供サマリー用紙のバージョンアップまで進んでいます。ポピ-でも会議にオブザーバー参加させていただきながら、参考情報を集めています。
●2月15日地域包括かがやきネットワーク連絡会参加(グループワーク進行担当)
地域多職種と、町内会長等住民が共にグループワーク(KJ法)。「地域で作っていけそうな助け合い」について話し合いました。住民の方と一緒に、いろんなアイディアを出し合うという、こんなに楽しい経験は初めて。包括の方の工夫に感動しました。医療と介護の連携にも主役である住民目線が必要です。
●2月10日マギーズ東京見学
マギーズ東京ってどんなところ?(マギーズ東京ホームページより)
がんになった人とその家族や友人など、がんに影響を受けるすべての人が、とまどい孤独なとき、気軽に訪れて、安心して話したり、また自分の力をとりもどせるサポートもある。それがマギーズ東京です。
自然を感じられる小さな庭やキッチンがあり、病院でも自宅でもない、第二の我が家のような居場所。海風を感じながら、自由にお茶を飲み、ほっとくつろいでみませんか。
大勢の方のチャリティ(寄付や協力)で運営し、無料でご利用いただけます。
マギーズ東京は英国生まれのマギーズがんケアリングセンター(マギーズセンター)の初めての日本版として発足。プロフェッショナル仕事の流儀出演でもおなじみの、秋山正子氏が代表です。定期的に自由見学も設定されています。当日も大勢の見学者が訪れていました。2016年にオープンし、1年で6000人の方が訪れたとのこと。がん療養は意思決定の連続、その中で自分を取り戻す場所が必要との説明の方の言葉が印象に残りました。