Jun 8, 2018

ポピーインタビューVol4:山川淳司氏(小規模特養老人ホーム大曽根施設長)

●今回は福祉・介護分野、特に認知症ケアで活躍される山川淳司様にお話をうかがいました。

※山川氏の活動:社会福祉法人清桜会の小規模特別養護老人ホーム大曽根及び小規模多機能居宅介護事業所おおそねケアセンター施 設長で、社会福祉士、認知症ケア専門士)

ポピー:以下ポ)小規模特別養護老人ホームと小規模多機能居宅介護事業所を管理運営されています。困難ケースほど喜んで取り組む管理者ということをスタッフの方からうかがいました。中でも認知症ケアでは、地域からも一目置かれています。

山川氏;以下山)小規模多機能型居宅介護事業所おおぞらケアセンターの運営・管理に携わっているときに、山形県の認知症介護実践研修で認知症を学び、その人らしさ、その方の尊厳を徹底して大事にすることで、BPSD(行動・心理症状)が本当に良くなるという実践を経験しました。自分のケアで対象者の状態が良くなるという成功体験を重ねることで、医療だけでは難しいこともケアで良くなることもあるのだと、その面白さにどっぷりはまりました(完全に魅了された)。現在も更なるレベルアップのために、学習と実践を積み重ねているところです。


ポ)精神科専門医の太田秀樹先生という方が「認知症・医療の限界、ケアの可能性」という本を書いていらっしゃいますが、まさにその「ケアの可能性」を自身の実践で体験された訳ですね。

山)そうです。うちの入居者さん達、ご本人が苦痛に感じるようなBPSDはほとんどみられません。その人らしさを大切にすることで、本人にとっても辛い症状が緩和されていくのです。認知症の症状に関しては、どうしても周囲の自分達の困りごとになってしまい、その人を自分たちが思う方へ変えようとしてしまいがちです。そうではなく、パーソンセンタードケア方式などで振り返り、その人そのままを受け入れると、こちらの気持ちも楽になります。当施設の職員研修でも、認知症ケアには力を入れています。認知症ケア専門士受験に向けての費用補助や、資格手当てを設けています。


ポ)教育支援は人材定着にもつながっていますか?

山)つながっていると思います。やりがいと自信になっていると思います。また、人材定着ということでは、職員の話を良く聞くことや、子育て支援にも配慮しています。子どもを連れてきてもよい環境を作っていて、土日・祝日、夏休み・冬休みなど職員の子ども達でとてもにぎやかです。


ポ)職員の子どもさんが来ることで、入居のお年よりも喜ばれるのでは?

山)そうです。まずはお互いの「笑顔」や「活き活きとした表情」、頭をなでたり、握手したりとふれあいが見られます。特に印象にあるのは、お年寄りが子どもを見つめる「目」です。そこから何とも言えない温かな空間が創られるような気がします。また、小学校2年生の児童から、「私、ここ(おおそねケアセンター)にいるのが一番好き!」「毎日来たい!」と言ってくれた時には、「うるっ」ときてしまいました。その子は進んでお手伝いをしてくれるとてもよい子です。高齢者も子どもも、そして職員も、誰もが「居心地の良い」と思う『居場所~拠り所』を今後も創っていけたらなあと思っています。


ポ)理事長の高橋邦之先生との連携で、医療的リスクの高い方への対応にも力をいれておられますね。

山)高橋理事長がいることで、医療的なところが担保されています。余命1ヶ月の方、一人暮らしでがん末期の方など、どんな困難な状況でも、「地域を守る」という信念を共有しているからこそ、引き受けています。どこでもやれないことを、ここで引き受ける。そんな事例を積み重ねることで、力をつけてきた、そんな感じです。


ポ)小規模特養や小規模多機能での看取りも地域からは期待されていますね。

山)看取りも数多く対応してきています。多くは行き場のない方です。一人暮らしで余命わずか、頑固で入所は絶対嫌という男性がいました。小規模多機能の通いや訪問介護で信頼関係が築かれ、最後には自分から「入所してもいい」と言われた方がおられました。

ポ)「あなた達なら、看てもらってもいい」というところまで、信頼関係ができたという感じですね。

山)そうだと思います。


ポ)今後やっていきたいことはありますか。

山)支援事例を積み重ね、研究というところまでもっていきたい。たまたま、上手くいったということではなく、誰もができるように検証していきたいですね。実践的研究です。

ポ)ケアの標準化ですね。職員の方は、日頃感じていることはありますか?

(主任石原氏):1分おきにコールをする方がいましたが、その人が今求めていることには、徹底して対応するという方針で、何度でもすぐに訪室するようにしたところ、ある時期からピタッと穏やかになられました。そんな成功体験を施設長にほめてもらうことで、また頑張れる感じです。通院前には必ずカンファレンスをして現状を確認し、状況が通院先に伝わるように医療との連携にも、努めています。


ポ)管理者として、実践者として超多忙な毎日をお過ごしと思いますが、気分転換や趣味は何ですか?

山)車が大好きで、愛車はスイフトスポーツ。2ヶ月に1回くらいですが、菅生のサーキットで、時速百数十キロで走りこんでいます。0.1秒を縮める自分との戦いをしています(笑)

インタビューを終えて

 成功体験から来る仕事の面白さにあふれたお話でした。とかく、大変と思われがちな(認知症)介護が、実は面白い!多くの人にそのノウハウを伝えたい。そんな情熱をひしひしと感じました。

施設のサロンスペースで、入居者の女性に「めがねが壊れたの。見てくれる?」と話しかけられる様子からは、いつもなじみの人として自然にそこにいる方ということが伝わってきました。

次回は、山川施設長のお話しにも出てきた高橋邦之先生に、インタビューさせていただく予定です。

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