Jan 19, 2016

科学的介護とは「特別養護老人ホームながまち荘の取組」2

その方の排泄記録はPCにも入力される。排泄リズムアセスメントに基づいてトイレ誘導を行う。

その方の排泄記録はPCにも入力される。排泄リズムをアセスメントし、トイレ誘導を行う。

 

ながまち荘の食、排泄、活動支援のバイブルは国際医療福祉大学教授 竹内孝仁氏の著書「歩行と排泄」

ながまち荘の食、排泄、活動支援のバイブルは国際医療福祉大学教授 竹内孝仁氏の著書「歩行と排泄」

排泄リズム記録表

排泄リズム記録表

 

 

とろみ剤はその方の嚥下力に応じオーダーメイド(目盛りをつけた専用コップと計量スプーンをスタンバイ)

とろみ剤はその方の嚥下力に応じオーダーメイド(目盛りをつけた専用コップと計量スプーンをスタンバイ)。誰が作っても同じ濃度になる。

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(写真上:同組織病院と連携し、必要時嚥下力評価し、その方にあったとろみ剤の量検討など行う。

(写真下:ホーム内を歩くと、そこここで好きな活動をする方に出会う。写真は注連縄造りの仲良しお二人.陶芸のコーナーもあり、地域の高齢者に開放、販売経路も検討し、地域住民の方の生きがいつくりも試みている)

●12月28日「科学的介護」のながまち荘理念に引かれて再びお邪魔し、会田るみ介護職主任に現場の実践をうかがった。(以下会田氏のお話)

「水分摂取、栄養・食事、排泄、活動はそれぞれ別のものではなく、みなつながっている。特に水分の充足は大切で、スムースな排泄はもちろんだが、覚醒状態にもとても影響が大きく、実際に多くの方が生き生きとした表情になってくる。必要に応じ医療と連携し血液検査の結果で脱水傾向の程度をスクリーニングし、必要水分量をお一人お一人勘案している。浮腫の状況や体重変化にも気をつけている。」

「水分の充足→起きていただく→スムースな排便→食事摂取量増→栄養面改善(血中アルブミン値改善)→活気が出る・活動性・歩行向上とすべてが好循環になってくる。歩くことで、表情も良くなり、結果が出ることは私達のやりがいになっている。胃ろう装着で入所された方でも、経口摂取への支援を行ったところ3年ぶりに食べられるようになった方がいて、『私に食べさせてくれてありがとう』と言ってくれたこと、会話できるまでお口の機能も回復したことは忘れられない」

「排便に下剤は極力使用せず、食物繊維ファイバーや乳酸菌補助食品の摂取を工夫している。食事量、体重、血液検査で栄養面に課題のある方には、栄養士と連携し補助食品も準備。そうして体調が良くなると、認知症の方の周辺症状も軽減してくる。」

「併せて、口腔ケアやお口の体操、マッサージによる口腔機能向上も大切で、歯科衛生士と連携して行っている。口腔の状態が良くなると、唾液の性状も変化、きれいになってくる。そのタイミングで少しずつとろみをつけた水分の摂取から開始。本格的な経口摂取は(同組織)病院でのVF(嚥下内視鏡)での評価を受けてから開始。やる気を引き出し、その方のお好きなもの、例えばソフトクリームを食べに行きましょうなど外出イベントとからめて目標を持ち声をかけたりもしている」

「食べられる、体力が付く、その次は歩行へのリハビリ。まずは起きていただくところから、施設内PTと連携して頚部の柔軟性やポジショニングを」

●ながまち荘の科学的介護とは「医療と連携しながら検査結果などの根拠を基に、又、日常生活における各種データ(排泄、水分、食事摂取)を個別に読み解き、水分摂取、低栄養予防・改善、排泄の自立、歩行や趣味活動などの活動支援まで一連の流れとしてその方にあったオーダーメイドで取り組み、結果生活の自立をひきだしていること」であった。又週1回施設内多職種が集う「自立支援検討会」を行い、かなりシビアに実践状況を評価しあい、次に展開しているという。その成果は、ホーム内を歩くと、そこここにいきいきとした居住者の皆さまや職員の方がおられ、歩いている方も車いすの方も満面の笑みを返してくださる事からもうかがえる。玄関を入ったときから、あたたかい空気が満ちている。

●医療分野では今、EBM(科学的根拠に基ずく医療)だけでなく、NBM(物語(その方のこれまでの人生)に基ずく医療)も大切にするべきだと言われてきている。片や介護分野では、ながまち荘のような科学的根拠に基ずいてケアを提供しようとの動きに期待が集まっている。医療と介護が近づきつつあると感じさせる今回のお話であった。         (T)

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